【小説】『老いた男』若気の至りでございます

トマス・ペリーさんの『老いた男』という小説を読んだので、いつも通りだらりと書いていきます。

老いた男 (ハヤカワ文庫NV)

老いた男 (ハヤカワ文庫NV)

 

主人公は60歳前後の元特殊工作員でして、この主人公が敵から追いかけ回されるという、簡単に言いますなら逃避行のお話でございます。

一口に逃避行と言ってもなかなかの長期戦でして、作中で数か月とか1年とかそれくらいの期間に渡って逃げ続けるのです。

その逃げる途中では何度も身分を偽装して他人になりすましたりして生活していて、まさに生きる世界が私とは違うなあと思った次第でございます。

そして主人公が敵から追いかけ回されるきっかけとなった事件と言いますのがいわゆる若気の至りというものでございまして、主人公がまだ若かった30年以上前にしでかしたとある事件がきっかけなのであります。

その事件の詳細は省きますが、その若気の至りというのが、ちょっとムッときてついうっかりやってしまったことなのでございます。

自分ではそうするのが正しいと思ってやったことでも、実はそれが原因で問題が起きてしまった、というパターンなのです。

そしてその結果、30年もの月日を経てある日ふと気づいたときには敵に追いかけ回されることになっているのですから、これもうえらいこっちゃであります。

ざっくり言ってそんな内容の小説なのですが、60歳でもう引退した老人とされている主人公が、追っかけてくる現役の工作員をことごとく蹴散らしている様はどこか清々しい感じがしたのでございます。

引退してもその仕事ぶりは現役以上という、なかなかの切れ者でございます。

また原題は『The Old Man』でして、一見したところ邦題の『老いた男』と何ら変わりがないように思えるのですが、実はこの「old」という単語には「老練な」みたいな意味もあるそうで、この主人公はまさに老練だなと思った次第であります。

言うならば、彼は老いた老練な男なのでございます。

さて、この主人公のように老いてもまだまだやれるぞ、という老人を目指したい方は多いかと思いますが、私といたしましては老いてから殺し屋に付け狙われるような人生はごめんであります。

年を取ったらぬくぬくまったりとご隠居したいものです。

おしまい。

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