この前の小説の記事ではグレン・ミードさんの『雪の狼』という小説について書きましたが、今回もまた同じくグレン・ミードさんの小説でございまして、今回は『亡国のゲーム』という小説を読んだのでございます。
さてこれは一体どういう小説かと言いますと、アメリカがテロリストによる化学兵器(毒ガス)攻撃の脅威にさらされるといった内容のものでございます。
ある日、テロリストの偉い人がアメリカ大統領に向けてメッセージを飛ばすわけです。
期限は1週間、この期限内に要求に従わなかったらアメリカの首都ワシントンD.C.を化学兵器で攻撃する、と。
そしてその攻撃が実現した場合、数十万の市民が虐殺されるという結末を見ることになってしまうのです。
しかしながら、やはりそうは言っても素直に「はい、そうですか」と要求を呑むわけにもいかんのでして、アメリカはCIAやらFBIやらをやんややんやと動員して犯人、そして化学兵器を探そうとするわけでございます。
1週間という極めて短い期間の間に首都あるいはその近郊というだだっ広いエリアを捜索するということで、関係各所の人々は寝る暇も惜しんで捜索に当たるわけなのです。
さて、先のテロリストからの要求のひとつには「実行犯や化学兵器を探すな」と言ったものがありますが、さらに都合の悪いことにアメリカの偉い人たちの中にはテロリストに寝返っている裏切り者がひとりいるのでございます。
でありますからして、その裏切り者を通してアメリカ側の意図を知ったテロリストは怒り狂い、さらに期限を短くしたりして事態はどんどん悪い方へと転がっていくといった次第であります。
とまあこんな具合の内容でして、それはもうえらくドキドキでハラハラの内容なのでございます。
私ウサオジは日本人ではございますが、果たしてアメリカはこの脅威に打ち勝つことができるのか、とアメリカの行く末を案じつつ読んでおりました。
また、私事ではありますが、迫りくる納期を前にして悪戦苦闘していたときの前職の記憶がフラッシュバックしたりして、苦悶の声を上げたくなったりしていたのは秘密でございます。
まあとにかく心臓に悪い小説でございましたが、それはそれでインパクトのある内容ということなので良しとしましょう。
ところで、他にも面白いところがございまして、それは実は著者覚え書きにあったりするのです。
その覚書によりますとこの小説を執筆していたのは2001年ごろでして、2001年と言えばあの悪名高い9.11の同時多発テロ事件があったことで有名ですが、なんとこの小説はそれとほぼ同時期に書かれていたというのですから驚かずにはいられないのでございます。
加えて、その覚え書きには、著者がこの小説を書くために取材したその道の専門家たちがこの作品のテーマについて「それは起こっていてもなんの不思議もない」と太鼓判を押しているとも書かれております。
というわけでして、もしかしたらこの小説の内容はフィクションでは済まされないものだった可能性すらあるのですから、たまげたものです。
そういった意味では、この『亡国のゲーム』も『雪の狼』と同じく、ありえたかもしれない歴史の1ページを描いた作品なのでございまして、いやはや現実とはなんとも恐ろしいものだなあと思わずにはいられんのでございます。
さて、ということを踏まえると、私が前職の仕事で多少納期をオーバーしてしまい上司やお客さんから大目玉をくらうことになったとて、そんなものこれと比べたら大した問題ではないのだなあと思っちゃったりもするのですが、それはそれでして、仕事はちゃんとやらんといかんのでございます。
もしかすると、怒り狂った上司やお客さんが化学兵器を持ち出してくる可能性もないとは言えないのでございます。
ちなみに、私のこの前職の仕事についてですが、実際のところは無事に納期に間に合っておりますのでご安心ください。
ともあれ、『亡国のゲーム』は鬼気迫る様子が迫力満点のとんでもない作品でございました。
おしまい。