スタニスワフ・レムさんの『ソラリス』という小説を読みましたので、今日はその感想を書いてみようと思います。
初めにお伝えしておきますと、これからこの小説を読んでみようという人はこの記事を読まない方が良いです。
これは何も知らずに読んだ方が良い小説でございます。
さて、一応警告もしたことですしいきなり結論を言ってしまいますと、有り体に言ってつまらなかったです。
そのつまらなさと言ったら、これほど読むのが苦痛な小説は滅多にないだろうと思えるほどでございます。
と言いますのも、何をやっているのか、あるいは何が起きているのかほとんど分からないまま物語が進み、一切何も分からないまま終わるのです。
あるいは、何も分からないということが分かったということでしょうか。
「何もない」がある、みたいな言い方ですみません。
ともあれそんな感じですので、謎が明らかになる、というようなオチを期待していた私はどうにも肩透かしを喰らったような気になってしまい、このような評価を下すに至りました。
さて、ここまで内容にほとんど触れずに来ましたが、ここらでちょいと内容について触れておきますと、これは"ソラリス"という名の惑星にあるステーションで起きたことについての物語であります。
このソラリスという惑星にはちょいと特殊な"海"のような物体があるのでして、それの調査が主人公ケルヴィンやその他のステーションの研究員のお仕事でございます。
そしてこの"海"というのがなかなか得体のしれない恐ろしい代物でございまして、定期的にその中から数マイルにも及ぶ規模の複雑怪奇な超巨大構造物を生成したり、果てはステーションに滞在する人の脳の中を"覗く"こともできるというのです。
そんなこんなで、読んでいるときは「この"海"の正体を暴くのが主人公たち、ひいてはこの小説のテーマ」と思っていたですが、その目的は一切果たされることのないままこの物語は終わります。
私は今までスパイ小説や冒険小説というような「最終的に何らかの謎が明らかになって物事の白黒がはっきりする」小説を読んできましたが、ところがこの『ソラリス』はそういった作品とはまったく違ったのでございます。
むしろそういったところとは全く反対の位置にある作品でございました。
結局何もわからん、それこそがこの物語のオチでございます。
同じSF小説でも、以前読んだ『三体』とはまったく違うタイプのSF小説でございました。
その点に関してましては、『三体』は白黒はっきりするので面白かったのでございます。
ところで、この小説を読んだことでひとつ発見がありました。
それは、私が小説というものに何を期待して読んでいるのか、ということであります。
それは上にも書きました通り、「謎が明らかになって物事の白黒がはっきりする」といったところでございます。
そういったことを通して、晴れ晴れとした気分になりたいがために私は小説を読んでいるのであります。
期待しているものとは全く逆の内容の小説を読むことによって自分が小説に何を期待しているのかやっと分かり、それこそ晴れ晴れとした気分になっているウサオジでございます。
さて話を『ソラリス』の話題に戻しますと、先ほどは"海"の正体を暴くことがこの小説の目的と申し上げましたが、実のところ、読み終わった今ではそれとは別の感想を持っております。
これは得体の知れない存在を描くことを目的とした小説なんじゃないかなあと思いました。
また、小説の訳者あとがきで紹介されていたスタニスワフさんがこの小説のロシア語版に書いた序文でも実際にそのように書かれておりました。
曰く、『はるかな宇宙には「未知なるもの」が待っている』とのことです。
そんなこんなでありまして、「未知なるもの」に出くわしたときにどんな感じになるのか、といったことを実感するにはうってつけの小説でございました。
もも~んとした気分になります。
というわけでして、この小説を通して世の中には白黒はっきりしないものもある、ということを教わったような気がします。
さて気づけば、冒頭で「つまらなかった」と言っておきながら長々と書いてしまいました。
これを「つまらない」という言葉で締めくくるのはどうかとも思いますが、物事の白黒がはっきりするような物語が読みたかった私といたしましては、やはりそう書く他にないのであります。
しかしながら、「得体の知れないものと出くわすとはどのようなことなのか」といったことを体感することができるという点では、とても斬新な感じがしました。
多分これは結論ありきで読む小説ではなく、結論を探る過程を楽しむ小説なのでございます。
「面白い」とか「つまらない」といった軸で語るのがそもそも間違っていたのかもしれません。
ともあれ、次は白黒がはっきりする面白い物語を読みたいウサオジでございます。
こういうのはたまに読むくらいがちょうど良いのでございます。
おしまい。