『チェイサー91』安全保障でございます

最近ずっと読みまくっていた小説シリーズをこの前遂に読み終えましたので、その第一作目について今日は書いていきますよ。

夏見正隆さんの『チェイサー91』でございます。

さてあらすじといたしましては、日本政府の原発ゼロ宣言を受けて国連事務総長が日本の高速増殖炉「もんじゅ」に眠るプルトニウムの国連管理を提唱し、それが常任理事会で承認されちゃったもんだから、そっからはもうやんややんやとすったもんだでプルトニウムを巡るどえらい陰謀の真っただ中に日本が頭から突っ込んでいくことになる小説でございます。

そんでもって、偶然にもその陰謀に巻き込まれた航空自衛隊員の元戦闘機パイロットで現役整備員の女の子「舞島茜」と、同じく空自隊員のその妹「舞島ひかる」が姉妹で巨悪に立ち向かうという、凄まじく凄まじい物語なのですよ。

訓練中に行方不明になった空自戦闘機、突如として日本各地の自衛隊基地を占拠する米海兵隊、そして日本のプルトニウムを虎視眈々と狙う中国・・・さあ一体この事件はどこに向かっていくのか。

と、そんな感じでございますよ。

序盤は、というか中盤までは一向に何が起きているのか分かりませんし、あるいはこれから何が起きるのかも予断を許さない展開でございまして、どきどきとはらはらが止まらんでございます。

東アジア情勢、国連、日米安保条約などなど、日本を取り巻く政治状況、日本の安全保障を題材にした極めてスリリングな物語でございましたよ。

ちなみに、この小説を読んで知ったのですが、国連の憲章の中には敵国条項なるものがあるそうでして、この敵国条項とかいうやつがなかなか日本にとっては厄介なものであることが分かりましたよ。

こういうのはあまり詳しくないのでよく分かりませんが、日本が侵略戦争だのなんだのの危なっかしいことをしでかそうとしたら、安保理の承認をすっ飛ばして他国が日本に軍事制裁することを認めるという恐るべき恐ろしい物騒な条項だそうでございます。

そしてこれの本当に恐ろしいところは、実際に日本が侵略戦争を企てているかどうかには関わらず、他国に「日本が戦争を起こそうとしている!」だのなんだのと難癖をつけて日本に武力攻撃する口実を与えかねないというところでありまして、しかもそれが憲章で認められている以上、日本を含め国連に加盟している他の国々はそれに対して抗議することもできないらしいのでございます。

と、そんなこんなで日本の安全保障が本書のテーマのひとつになっていたりもしますので、そういうのが気になる人は読んでいただければと思いますが、そんな難しいこと抜きにしても主人公の空戦シーンがえらくかっちょええのでぜひ読みましょう。

おしまい。

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