昨日は『崖上のスパイ』を観てまいりましたよ。
舞台は1934年冬の満州、潜入した4人のスパイが極秘作戦を遂行すべく、雪の降りしきる極寒の世界で彼らを追う特務警察と繰り広げる白熱した諜報戦を描いた映画でございます。
作戦名「ウートラ」、ロシア語で「夜明け」を意味するこの作戦の内容とは、日本軍の秘密施設からの唯一の脱走者を国外へ脱出させ、日本軍の蛮行を世に知らしめること。
しかしこの作戦は一筋縄でいくようなものではなく、なんならもう初っ端からコケまして、作戦関係者が敵である特務警察に寝返ったことによって、この作戦の存在がバレてしまいます。
そして二手に分かれたチームの片方は、味方を装って近づいてきた特務警察の手にまんまと落ちてしまい、もう一方のチームをおびき出すための餌にされるわけですよ。
始まるや否や絶望的な状況に陥ってしまった今、果たして彼らは特務警察の追手を振り切り目的を達成することができるのか!?
と、そんな感じでございます。
ここからはもうひたすらにスパイとそれを追う特務警察との騙し合いの連続でして、まさに油断禁物でございます。
ちょっとした油断が、文字通り命取りとなってしまいますからねえ。
一体どこがクライマックスなのか分からないほどに終始緊張したシーンの連続でございまして、気づけば上映が終わっていたといった感覚でございます。
気を抜いたら観ている私も殺されるんじゃないかと思うような映画でしたねえ。
一時たりとも油断できない過酷なスパイの世界を垣間見てしまいました。
他には、登場人物もなかなか癖がありまして、と言いますのも、他の映画でありがちな目立った特徴を持った人物がほとんど出てこないんですよねえ。
ほとんど似たような黒っぽい服装のオジサンばっかりだったこともあって、特に男性の登場人物は後半になるまで誰が誰だかあんまり分からないまま観ておりましたよ。
分かりやすい人物と言えば、いかにもな感じで貫禄を漂わせていた特務警察の長のオジサンくらいですねえ。
しかしよく考えてみれば、彼らはスパイとスパイハンターですからそもそも目立ってはいかんのでして、こうなるのも当然と言えば当然でしょう。
影の世界に生きるスパイは、決して表舞台に立ちません。
とは言っても、やはり登場人物がいまいち分からないまま鑑賞してしまったというのは、どことなく消化不良感がありますので、できればまた観に行きたいところでございます。
そもそも金曜夜という1週間で一番集中力の欠けている時間帯に、こんな頭を使う作品に観に行ったのが間違いだったかもしれませんねえ。
今度は日曜の昼間とかに白昼堂々と観に行きたい。
やっぱり金曜夜は、サンタがハンマー振り回して悪党を蹴散らすような、小難しいこと考えずにシンプルに楽しめるやつが良いですよ。
ともあれ、『崖上のスパイ』、登場人物は地味だけど作品としては存在感むんむんの異色のスパイ映画でございました。
ド派手な登場人物に緩急のはっきりした分かりやすいストーリーの大衆エンタメ映画とは一線を画した、ちょいと渋めの作品でしたねえ。
さて渋めと言えば、雪の白さと夜の黒さを基調とした映像が渋くて趣があったということもここに書き添えておきましょう。
カラー映画なのにどこかモノクロ映画の気配を感じる、そんな独特な映像表現も記憶に残っております。
ともあれ、今から私は休日をエンジョイするための作戦「グータラ」を遂行すべく、『崖上のスパイ』とは打って変わって大衆エンタメ感がむんむんの『バンバン!』を観てまいります。
これは気楽な気持ちで楽しめそうな予感がいたしますねえ!
おしまい。