観てきましたよ、『ブラフマーストラ』。
ざっくり内容に触れますと、孤児のDJが愛によって内に眠るスーパーパワーを覚醒させ、世界を滅ぼすほどの強大な力を蘇らせようとする巨悪を討つファンタジーアクション映画でございました。
自分で書いといて言うのもあれですが、一体なんちゅう映画でございますかねえ。
とは言え、間違ったことは何も書いていないので気になる方は観てきてほしいのでございます。
観ればきっと、「ウサオジさんは本当に正しいことを言っていたなあ。疑ってすみませんでした」となりますから。
あと、主人公がDJというところからも明らかですけれども、もちろんインド映画らしいダンスシーンもありますし、何だったら主人公の戦闘シーンも半分ダンスみたいなものでございますので、その点はご安心いただければと思いますよ。
さて、この映画で面白いと思ったのは、インド神話をモチーフにした斬新な世界観とCGによるド派手な演出ですねえ。
それではまずこの映画の世界観から語るとしましょう。
太古の昔、賢者のお歴々が修行の末に神々からアストラという自然の力を宿した武器を授かるわけでして、それらアストラの中でも最強の力を持つ究極の存在が、タイトルにもあるブラフマーストラと呼ばれるものでございます。
それで、アストラを授かった賢者の面々はアストラを守護することを誓い自らをブラフマーンシュと名乗り、ブラフマーンシュの役割は古代から現代に至るまで秘密裏に脈々と受け継がれるようになります。
そして時は流れて現代、世界を滅ぼすほどの圧倒的な力を持つというブラフマーストラを狙う邪悪な連中が現れるわけでして、本作の物語はここから始まるわけですよ。
どうですか、この設定。
とにかく規模がでかくて壮大。
そしてインドのオイニーがむんむんでございますよ。
こんな神々を巻き込んだ桁外れのスケールの設定は、間違いなくインドならではでしょうねえ。
そして規格外の規模の物語に見劣りしないド派手なアクションについても、語らないわけにはいきません。
アクションシーンがですねえ、とにかく光が迸っていてド派手なんですよ。
例えるなら花火大会のよう。
敵も味方も神の力をぶつけ合いますから、とにかくド派手なんですよ。
一番序盤でも、ブラフマーンシュの一人が巨大な光の猿の化身を召喚したりして圧倒的でした。
これにはもう、現代の映像技術を使い倒してるなあという他ありませんねえ。
古代の神話を現代の最新テクノロジーで描いているような、そんな斬新な映画でございました。
ところで、本当にしょうもない話で恐縮ですけれども、途中で主人公がアストラの力に目覚めるわけですが、どうもこの主人公の戦い方がどことなくマリオっぽかったんですよ。
主人公はアグニヤストラという火のアストラに目覚めるわけでして、それで火の玉を飛ばして敵を蹴散らすシーンがあるわけですが、さらにジャンプしたりして軽快に動きながら火の玉を敵に向かって投げるもんですから、もはやこのシーンでは主人公がファイアマリオにしか見えませんでした。
インド版マリオ。
というわけでして面白いところがたくさんあったのですけれども、しかしながらイマイチなところもまあまああったんですよねえ。
まずはアクションなんですけれども、派手だったところは良いとして、ただその派手さは完全にCGによるものなんですよねえ。
生身の人間の動きの方は、大したことありません。
アクション映画にあるまじき大したことの無さ。
特に主人公の動きが酷かったですねえ。
完全にCGに使われているような感じでございました。
もはやあれは戦っているというよりは踊っているだけで、あとはCGがうまいことやって戦ってる感を出しているといっても過言ではありません。
ちなみに、主人公以外の、とりわけ最初に出てくる猿の力のオジサンと中盤の牛の力のオジサンのところは結構面白かったし、敵の幹部みたいな2人のオジサンも結構アクションしてたので、結局は一番肝心の主人公のアクションがショボかっただけということになってしまうかもしれません。
頑張れ主人公。
そして音楽なんですけれども、ミュージカルシーンの音楽がなんかどれも似たような曲調だったのでございます。
インド映画の面白さと言えば、場面に合わせた多彩な音楽だと私は勝手に思っているんですけれども、本作は似たような曲が多かった。
映画『BLUE GIANT』の作中で、大が雪祈に「お前のソロ、いつも似てねえか?」と指摘するシーンがありましたけれども、私もこの映画の曲に対して同じような感想を持ちましたねえ。
この映画のミュージカルシーンの曲、いつも似てねえか?
もしかしたらと思って鑑賞後にサントラを聞いてみましたが、改めてやっぱりほとんどの曲の曲調が似ているなあと思った次第でございます。
ちなみに一応フォローもしておきますと、個別に聴いたらそれぞれの曲はそこまで悪くありませんでしたよ。
ただ、似たようなのを立て続けに聴かされたせいで、前菜からデザートまで全部カレーが出てきたときのような気持ちになったというだけでございます。
そして何はともあれ、私が一番酷いと思ったのは終盤のクライマックスでございます。
これがなかなか酷い出来なんですよ、
「え?ここまで引っ張っといてそれで終わるんですか!?」、みたいな。
まずはとにかく、悪党の親玉がショボい。
なんか物凄く強大な力を持っているっぽいキャラとして登場していたので、最後くらいもっと激しく戦ってもらいたかったなあと思います。
どうもこの作品、シリーズ物の第一作目っぽいのですけれども、続編があることに甘んじているような悪役だったかなあと思います。
ラスボスみたいな悪役が次回作以降に控えていて今作の悪役はそのラスボスの手先だったとは言え、さすがにあれはあんまりではないでしょうかねえ。
漫画の打ち切りみたいな終わり方でございました。
それともうひとつ酷かったのはラストの絶体絶命の危機の片付け方でして、結局「究極の力は愛だった」なんてオチで片づけるんだったら、そこまでやってた神々の力がどうのこうのって一体何なのよって感じでございます。
世界を滅ぼすほど強力な神々の力を愛の力が凌駕するなんてさらっとやっちゃったら、もうこの作品の設定が根底から覆っちゃうでしょうよ。
こんなことやられたら、もう次回作見るときも「あー、これ結局愛の力で全部うまいことやっちゃうやつですねえ」って思うことは不可避。
次回作あるっぽいんですけど、本当にこれ一体どうするんでしょうか。
次また同じ手を使ってラストを迎えたら私は許しませんから、制作陣にはぜひとも覚悟していただきたい。
今度の作品で「どんな強敵も主人公が愛の力で圧倒、そして超強力な神々の力を得た最強のラスボスも愛の力の前には無力」なんてやった日には、そりゃあもうこのブログでボロクソに感想書いてやろうではありませんか。
もしまた愛の力で全部強引に解決するような終わり方をしたら、そのときは満を持してこう言ってやりますよ。
このシリーズのラストの展開、いつも似てねえか?
というかそもそも、次回作が出るまでこのブログが続くかの方が問題のような気もしますが、その点には触れないでおきましょう。
というわけでして、面白いところもあればそれと同じくらい酷いところもあった映画でございました。
総評としては、ギリギリ次第点ってところでございます。
1回観るだけなら目新しさだけで面白いかもしれませんが、2回目はそうはいかないでしょうねえ。
作中で主人公が「もしも人生に陰りが見えたら、光を探せ」というようなことを言っておりましたが、私にはこの作品自体に陰りが見えたような気がしますので、ぜひとも光が見つかるといいなあといった思いでございます。
さてと、それでは次回作に期待してしばらく待つとしようじゃありませんか。
おしまい。