ウサオジという男、『きみの色』を観る

音楽系の映画で面白そうなのをやっておりましたので、観てまいりました。

『きみの色』でございます。

kiminoiro.jp

各人が各人なりの秘密や悩みを抱えつつも音楽が好きという共通点で結ばれた3人の高校生が、偶然の出会いをきっかけにバンドを組んでライブをするという内容で映画でございます。

シンプルに文字で書いてしまうとこんな感じで物凄くありがちな内容に見えてしまうのですけれども、しかし内容はなかなか印象的でございました。

一番印象に残ったのは、作品全体を通して非情に落ち着いていて穏やかな雰囲気だったことですねえ。

見た目には優しいパステルカラーの色調が印象的でしたが、内容もその通りでしたよ。

同じ音楽をテーマにした例えば『BLUE GIANT』なんかだと、青春真っ盛りの連中が激しくぶつかり合いつつも最終的には困難を乗り越えてデカい目標を成し遂げるという要素がありましたけれども、そういった激しさはとは異なるものがありました。

かといってつまらないわけではなく、偶然集まった3人が勢いでバンドを結成し、日々練習を重ねお互いを理解していく過程が丁寧に描かれ、そして最後のライブでフィナーレを迎える、そんな様子に引き込まれました。

またその過程で3人がそれぞれの悩みと対峙して、結果自分なりの落としどころを見つけて行く様子もどこか清々しいものがありましたよ。

また何より、作中の「僕たちは好きと秘密を共有しているんだ」というセリフがこの作品を象徴するような気がしてとても気持ち良かった。

正直に申し上げまして、普段はもっと激しめの作品を好んで観る私からしたら最初この作品は少々物足りないような気がしたのですけれども、振り返ってみればこういうささやかな物語も良いかもしれないと思う今日この頃でございます。

青春物の作品だと若さ全開で山火事のように激しく燃え盛るような作品が多いのかもしれませんが、こういった焚火のように静かに燃えるような青春があっても良いではないか。

普段あまりに表には出さずともそれぞれ悩みや葛藤があって解決したいことがある、そんな人たちが集まって好きを共有して一歩ずつ前に進む姿が実に清々しく思えました。

そしていよいよ満を持してライブが始まりメンバー3人のオリジナル曲を披露するのですが、やはりここが一番の山場でしたねえ。

アップテンポな盛り上がる曲からスローテンポなしっとりした曲までそれぞれまったく印象の違う3曲が演じられるのでして、どれも聞いていて個性が感じられて面白い。

実に面白いライブシーンでございました。

3人の声や楽器の音に加え、パソコン打ち込みの伴奏も活用して曲を創り上げるのが物凄く「今」っぽかった。

また、本作の音楽について他に面白かったのは、使用されている楽器なんですよ。

メンバーの一人が「テルミン」というあまり聞きなれない楽器を使うのでしてこれがまた面白い音を出すんですねえ。

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調べたところどうもこれは音量と音程をアンテナと手の位置関係によって制御するという仕組みらしく、アンテナの飛び出た見た目もなかなか癖が強いし、音もどこか哀愁を誘う独特な音でございました。

よくもまあこんな珍しい楽器を見つけてきたなあと感心する他ありません。

この楽器が選ばれた背景を知りたいですねえ。

と、そんな具合で、珍しい楽器に普段観るような激しい映画とは一線を画するストーリーなど、いろいろと楽しめる映画でございました。

おしまい。