『パリタクシー』ウサオジという男、パリのタクシーの映画を観る

昨日は『パリタクシー』を観てまいりました。

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これは、家族を養うのもやっとな薄給、1日12時間の勤務、週休1日、おまけにあと2点で免停、そんな過酷な日々を生きるちょいと不機嫌で不愛想なタクシー運転手の中年オジサン「シャルル」と、彼が運転するタクシーに乗り込んで老人ホームへ向かう高齢マダム「マドレーヌ」の物語でございます。

ギリギリの生活を送る一人のタクシー運転手シャルルの元に舞い込んできたのは、一人のマダムをパリの反対側にある老人ホームへ送るだけのシンプルな仕事。

しかしながら、タクシーに乗り込んだマドレーヌの頼みであちこち寄り道をすることになってしまい、その過程でマドレーヌの過去を振り返りつつ2人は親交を深めていく、というのが話の大筋でした。

さて、この作品の面白かったところと言えば、シャルルとマドレーヌで同じ街を見ているにも関わらず、思うことはまったく違うといったところでございましたよ。

タクシー運転手のシャルルは1年で地球3周分もタクシーを走らせるわけでして、そんな彼にとってパリの街並みはそれこそもううんざりするようなものでしかない一方、しかしマドレーヌにとってのパリはまったく違いまして、彼女にとっては何十年もの思い出の詰まった忘れ難い街なわけでございます。

つまりは、誰かにとってはなんでもないただの場所でも、また別の誰かにとってはいろいろと忘れ難い思い出の場所であるわけでございまして、その当たり前だけれども普段は意識することのなかった事実に気づいたとき、日ごろ私が生活する場所や訪れる場所にもそういった数々の思い出が宿っているのだろうなあと思い、感慨深い気持ちになりましたねえ。

というわけでして、普段見る風景に対する視野を広げ、印象を変えてくれるような作品だったと思います。

『パリタクシー』という軽快で明るい印象を与えるタイトルとは裏腹に、パリの美しい街並みを眺めつつどこかしみじみとした気持ちにさせてくれる、味わい深い映画でございました。

おしまい。