『ノック 終末の訪問者』ウサオジという男と、狂気じみた訪問者

昨日の映画は『ノック 終末の訪問者』でした。

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その内容は、ゲイの夫婦が養子の女の子とともに人里離れた森の奥にある山小屋で休暇を過ごしていると、ただならぬ気配を帯びた4人の連中がやってきて3人を拘束監禁し、「君たちは選ばれた。君たち3人の中から1人を選んで殺さなければならない。さもなければ君たち3人以外の全人類が滅びる」と言ってくるところから始まります。

そこから3人の家族は家族か世界かの選択を迫られるわけなのですけれども、なんといってもこの4人の訪問者たちの尋常ならざる様子が恐ろしい。

彼らは最初、小屋の前に立ち「我々は大事な話があってここにやって来た。顔を合わせて話をしたいから、どうか中に入れてくれないか」と言いつつ、しかし会話を拒否する家族が立てこもった小屋の玄関や窓を全力でぶちこわして強引に侵入してくるわけですよ。

そして力づくで家に侵入してきたと思ったら、さらには家族を椅子に拘束する始末。

その上、押し行ってきた連中が口にすることと言えば、上に書いたような「世界が滅びる」とか「犠牲となる家族を選択せよ」とか言った悪い冗談のようなたわごとでございます。

さらに何よりも意味不明なことに、この狂気の4人組の様子が尋常ではないわけでして、ここまででやっていることは強盗と変わりないのにも関わらず、しかし何かに心底怯えつつしかも物凄く申し訳なさそうな態度をしているわけですよ。

やっていることと態度がまったく噛み合わないところに、底知れぬ恐ろしさを感じました。

そして、4人それぞれが暴力を行使するために生まれてきたとしか思えないような危なっかしいアイテムを持っているわけでして、しかし彼らは「これは武器ではなく、道具だ」と言い張るし、とは言えやっぱり結局のところそれを人殺しに使うわけですよ。

家族が犠牲を差し出すことを拒否するたびに、訪問者のうちの1人が白いマスクを頭から被って跪いては何かに憑依されたかのように「人類は裁かれた」とかなんとかたわごとを言い出し、「なんだこのキチガイは」と思っていたら唐突に他の訪問者たちが白マスクの訪問者を「道具」とやらで惨殺し始めるわけでございます。

やっぱり武器じゃないですか!

と思ったのも束の間、直後、自分たちで仲間を殺したにも関わらず、それに物凄く動揺してゲロを吐いたりする残りの訪問者たち。

もはや行動が常軌を逸しすぎております。

それで、もうこんなのカルト以外の何者でもないではないかと思っていると、落ち着きを取り戻した訪問者の1人がおもむろにテレビの報道番組を見せてくるわけでして、その映像には津波や疫病など、惨殺前に訪問者たちが予告した通りの災厄が映っているわけですよ。

そこで私は思いました。

この気の狂った訪問者どもが言っていることは、もしかしたら本当なのかもしれない。

という感じの作品だったわけですけれども、一言で言うなら心拍数の上がる映画でしたねえ。

一体何が起きているのか分からないという不安と緊張がとめどなく押し寄せてきます。

もはやこの映画は観客の理解を拒んでいるのではないかというくらいに、何もかも意味不明。

いきなり凶器を持った訪問者が申し訳なさそうにしつつも強引に押し入ってきては、世界の終末がどうのこうのと泣きそうになりながら言ってくるし、しかし逃げようとしたら暴力を行使することを厭わない。

しかも挙句の果てには仲間内で生贄を差し出みたいな行為までする始末。

と、そんな感じで、とにかく終始尋常ではない気配の漂う油断のできない映画でございました。

そうしょっちゅう観たくなるような類の映画ではありませんでしたが、これはこれでスリルがあって面白かったです。

そういえば、原作となった小説もあるらしいので、また今度読んでみるとしましょうかねえ。

ちなみに、もしこれから本作を観る人向けに言っておきますと、最後はしっかりと最後っぽい終わり方をするので安心して観ていただければと思います。

それと、観るならエンドロールまでしっかり観ておきましょう。

おしまい。