ウサオジという男、『プー あくまのくまさん』を観る

今月、いや今年最大の問題作と言っても過言ではない『プー あくまのくまさん』を観てまいりました。

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えらく乱暴に内容を説明いたしますなら、闇落ちしたクマのプーさんがサディズム全開で殺戮の限りを尽くすといったホラー映画でございました。

狂気に満ちた熊が、縄張りに立ち入った人間を次から次へと血祭りに上げていきます。

ともあれ、観ていてまず思ったのは、何よりも「100エーカーの森」って一体どれくらいの広さなのかってことですよ。

分かってて当然みたいな具合で何かにつけて100エーカーの森と出てきますけれども、エーカーという単位に馴染みのない私には100エーカーと言われてもパッと分からん。

それで早速家に帰ってから調べてみたのですけれども、どうも100エーカーは約40万平方メートルでございまして、これは1辺約630メートルの正方形の面積に近似するとのことでした。

そしたらお次は630メートル四方の正方形がどれくらいかが分かれば、もう100エーカーの森の広さは分かったも同然。

ということでグーグルマップの距離計測機能を使って近所の630メートル四方の正方形を探してみまして、もうこれで100エーカーの森の広さをがっちりと理解いたしました。

そして100エーカーの森の広さを理解した今ならば、私は自信を持ってこう言うことができます。

100エーカーの森って、思いのほか広くない!

そんな言うほど広くないですよ、100エーカーの森。

なんか物凄い仰々しい感じで出てくるもんですから、1辺何キロメートルもある正方形くらいの広さかと思っていたら、1辺1キロメートルもないとは!

さて、このままだと100エーカーの広さについて話すだけで終わりそうなのでこの話題はここら辺で勘弁してやるとして、それでは早速本題に入ろうではありませんか。

初っ端から100エーカーの広さの話で全部台無しにしてしまった感じがありますけれども、作品としては思いのほか面白かったのですよ。

敢えてリピートしようとは思いませんけれども、とりあえず1回くらいは興味本位で観ておいても良いほどには面白かった。

要するに、設定の荒唐無稽さによるインパクトがすべてみたいな映画でしたねえ。

ともあれ、原作をあんまりよく知らない私でも、原作の「クマのプーさん」にはどう考えても「殺戮」という単語が付け入る余地が無いことくらいは知っております。

しかしながら本作ではなんと、むしろ「殺戮」という単語以外他には何も見つからないくらいに殺戮の限りを尽くしております。

森の中でこんなことをしでかすような輩と言えば、私はランボーとプレデター以外に知りませんでしたが、遂に今年、ここにプーが加わってまいりました。

というわけでして、設定だけ見たら突拍子もなくて笑い過ぎてしばらく会話できなくなるくらいには面白いのですけれども、しかし内容はバイオレンスでグロテスクそのもの。

制作陣は一体なんちゅうことをやってくれたのか、という感想に落ち着きます。

そして他にも面白いのは、プーという怪物のキャラクターですよ。

身長2メートル越えの巨体、血と涎に塗れて歪んだ醜い顔、荒んだ毎日を送る50代の小汚いオッサンの如くでっぷりと突き出た腹、そんな「怪物」と形容する他ない見た目の生物なのですけれども、何よりも恐ろしいのが見た目に反して物凄く機敏に動くこと。

そりゃあもう物凄いですから、びゅんびゅん動きますよ。

こういう怪物ってパワーはあってものっそり動くのが定番みたいなイメージがあったのですけれども、予想に反してあまりにも機敏。

結構腹が出てるのに、一体どうしてそんな速度で走れるのかと思うくらいに走りますし、何かを聞きつけたときの振り向く速度も風を切る音が聞こえる気がするほど。

とりあえず、荒んだ毎日を送る50代の小汚い太っちょで巨漢のシリアルキラーの黄色いオッサンが物凄く機敏に動いている様を想像していただければ、あれを観たときの私の気持ちが分かると思います。

訳の分からない、人間の理解の範疇を超えた恐ろしさがありました。

そしてその見た目の恐ろしさの通り、とにかく森に入ってきた人間を見境なく惨殺する。

その手口は、警察が「これは被害者に強い恨みを持つ人物による犯行です」と言うのは間違いないくらいに残虐。

とにかく徹底的に破壊しにくる。

ちなみに、プーの技について私が最もとんでもないなあと思ったのは、空手チョップでございます。

空手チョップで人間ぶった切りますから、あいつは。

一体どんな威力の空手チョップ打ってんですか。

これはもはや、ランボーですら素手だったら勝てるか怪しい相手ですよ。

ちなみに、プーの仲間のピグレットも似たような具合の化け物で、ハンマーをぶん回した一撃で人間を叩き潰しておりますので、物凄い腕力でございます。

プーもピグレットも、とにかくパワーが人間離れしている。

そして何よりもこの作品のとんでもないところは、パンフレットに書いてあった「すでに続編の制作も決定している」という一文でございます。

これはつまり、また何年後かに邪悪なプーが暴虐の限りを尽くしに来るってことですよ。

しかもどうやら今作のヒットで次回作は予算も増えてるらしいですし、これはえらいことになるオイニーがむんむんですねえ。

計り知れない恐ろしさを感じる作品でございます。

さてところで最後に余談ですけれども、エンドロールが終わって劇場が明るくなったときに観客の女子の一人が、「ってか、プーさん嫌い」と話しておりました。

ごもっともでございます。

おしまい。