『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を観てきました。
これ凄かったですよ。
何が凄いかって言えば、何も分からないまま始まって何も分からないまま終わりましたから。
結局何も分からん!
何が分からんかと言えば、何はともあれまずは既に作品開始時点で内戦が始まっているものの、一体何が原因で内戦が勃発したのか分からんし、それぞれの陣営がどんな目的で戦っているのかも分からん。
そしてそのまま内線は続き、最終的には大統領が倒されるところで終わるのですけれども、にしてもこの内容のよく分からん感じは物凄い。
作中で少し映される大統領の言動と3期目の任期に入ったということから、多分こいつは好き勝手に政治をやってきたクソ野郎で、そのせいで内戦になったんだろうなあとは思うものの、しかしそれですら推測の域を出ないわけですよ。
ともあれ、内容は基本的にジャーナリスト4人が大統領に取材をしようと内戦中のアメリカ国内をワシントンD.C.まで行く道中の様子が描かれているのですけれども、その過程でひたすら内戦のショッキングな映像が続くのでございます。
内戦ということで秩序がぐっちゃぐちゃになって武装した連中が市民を虐殺していたり、市民が泥棒を働いたまた別の市民を吊し上げて拷問していたりとなかなか荒んでいるのですけれども、そんなのばっかり延々と映るのですよ。
そしてそういった凄絶なシーンの真骨頂は、ジャーナリスト4人組の一人が武器を持ったヤバいやつに囚われ処刑されそうになるシーンですねえ。
ともかく理由も明らかにならないまま捕まって殺されそうになるのですよ。
そもそも、相手はどういう陣営に所属しているのかも不明。
そして結局、シーンの最後まで観てもその処刑の理由が作中で明言されることはなく、想像するしかない。
また、ショッキングな描写は戦場の混乱の風景だけではなく、ジャーナリストたちの変化もなのですよ。
4人のうちの一人が熟練の敏腕ジャーナリスト、もう一人は新米ジャーナリストということで、最初は熟練の方が新米を助けるようになっているのですが、次第に立場が逆転していくのでございます。
序盤では熟練の方は淡々と目の前の光景を写真に収める一方で新米は恐怖で固まって動けないといったことになっているのですが、次第にそれが逆になるわけでございますが、この様子がなかなか狂気に満ちていて印象的でございました。
最初は恐怖に固まって写真を撮ることを忘れてしまったような新米が最後には自ら狂気的とも言える様子で前線に飛び込んで写真を撮るようになる一方で、熟練のジャーナリストは最終的にうずくまって動けなくなる。
文字に書くと味気ありませんが、映像で観るとこれはなかなか衝撃的ですよ。
そしてここでもやはり、なぜ二人が変わってしまったかという説明はまったくありませんでした。
それぞれがどんなことを考えてそうなってしまったのかは、またしても想像するしかありません。
というわけでして、最後まで観た感想としては、なんというかこの映画はとにかく説明じみたものを取っ払って観客に考えさせることに重きを置いて作られたような気がしますねえ。
意図的に肝心なところの説明を省いてよく分からなくしているような印象を受けましたよ。
ちょいと小難しい映画でしたねえ。
おしまい。