『最終戦争』うっかりネヴァーでございます

今日は久々に小説の感想を書いていきましょう。

というわけでして、『最終戦争』(著:エリック・L・ハリー)でございます。

ところで、昨年末に『ネヴァー』(著:ケン・フォレット)という小説を読んだのですけれども、本作はどことなくその『ネヴァー』を髣髴とさせるようなえげつない作品でしたよ。

と言いますのも、要するにどちらもちょっとした偶然やすれ違い、あるいはボタンの掛け違いから決して起こってはネヴァーな核戦争がおっぱじまるという作品でございます。

違いと言えば、『ネヴァー』の方は核戦争、第三次世界大戦が始まるまでの経過を描いたものでしたが、一方でこちら『最終戦争』は核戦争が始まってしまってからのお話が主に描かれているということですねえ。

それと、出版された時代を反映してか『ネヴァー』は中国が相手でしたが、『最終戦争』はソ連崩壊直後のロシアが相手でございます。

時代は20世紀末、お互いが相手を何度も破滅させることができるほど大量の核兵器を突き付け合っていた東西の冷戦が終結して間もない頃、米露両国は久方ぶりの平穏を手にしたと思ったのも束の間、ふとした勘違いと偶然から一瞬で核戦争へと突入するわけでございます。

20世紀後半の何十年もの間、非常に際どいところではあったものの辛うじてなんとか回避してきた核戦争に。

と言いますのも、ロシアは中国との領土問題で揉めておりまして、この問題に終止符を打つために中国への核攻撃を企てるのでございます。

そして、冷戦も終わって当時は友好国となっていたアメリカに、それを核攻撃直前に通知するわけですが、それがいけなかった。

その通知を受けて、ロシアの核攻撃による暴挙を黙認しないことを決めたアメリカ合衆国大統領は中国に警告をし、その警告が中国にロシアに対する核による反撃をすることを可能としてしまったのでございます。

折しもその一方で、ロシアの首都モスクワでは政府の方針に不満を持った将軍がクーデターを起こしまして、それによってクーデターの首謀者が核のスイッチを手にしてしまいます。

首都モスクワに飛来する核ミサイル、その連絡をクーデター首謀者は賛同者から受けるのですけれども、ちょうどそのとき通信障害が生じて、結局どの国が打ったのかは首謀者は知ることができず、知らされたのはただ自国が核ミサイルによる攻撃が行われていることのみ。

またそのときアメリカはアメリカでロシアの中国へ核攻撃を受けて、まさかの事態に備えて非常態勢を取り始めていたのですけれども、それを知ったクーデター首謀者はアメリカが核攻撃をしてきたと誤解し、アメリカに対する核攻撃を決断するのでございました。

これこそ、うっかりネヴァーでございます。

というわけでして、後はもう目を覆うばかりの惨劇に次ぐ惨劇。

あれよあれよという間にどんどん事態は悪化していき、遂には第三次世界大戦が始まってしまうわけでございます。

さて、この小説で一番印象的だったのは、ロシアからの核ミサイルが刻一刻とアメリカ本土へ向けて飛来する中、アメリカ大統領を始めとする国の要人たちがこの核攻撃にどのように対応するか、具体的には、ついうっかり間違えて核を打っちゃったロシアに対して核による反撃をするかどうか決断するシーンですよ。

クーデター首謀者は逮捕され、これ以上の攻撃はないとロシアから連絡があっても、しかしそれが本当なのか、それともただの偽装工作なのか、疑念は尽きません。

分かるのはただひとつ、今まさに核による破滅がアメリカに迫っていること。

もう読んでいるだけで、禿げそうなほどの重圧がひしひしと伝わってきました。

作中では、核の着弾までの数十分について延々と大統領やその他の登場人物の様子が描かれるのですけれども、これがえぐいことといったらもう。

胃がキリキリするなんてレベルじゃありませんよ、もう。

もはや胃がきりもみ飛行するかと思いました。

本当に読み応えたっぷりでございました。

これについては、このウサオジが太鼓判押しておきます。

これを読んでしまったら、他の戦争小説が霞んで見えるんじゃあないかと言うほどでございますよ。

ちなみに、これはまだまだ危機の始まりに過ぎないのでして、本当の危機、ハルマゲドンはこれからなのでございますけれども、長くなってきたので今日はこの辺にしておきましょう。

クーデターを鎮圧したロシアとアメリカの両政府は、それぞれ必死にこの戦争を食い止める術を見出すべく死力を尽くすのですが、しかしそれぞれの思惑の違いなどから徐々に事態が悪化していく様は、まるで『ネヴァー』の再来かのようでしたよ。

出版日から考えたら、逆に『ネヴァー』の方がこの『最終戦争』の再来と言った方が良いのかもしれませんが。

ともあれ、これが私が最近読んだ面白い本でございます。

 

今週のお題「最近おもしろかった本」

 

『最終戦争』、タイトルにふさわしい究極の小説でございました。

おしまい。