『イチケイのカラス』真実でございます

一昨日は『イチケイのカラス』を観てまいりましたので、一日空いてしまいましたが、今日は感想を書こうと思いますよ。

ichikei-movie.jp

ちなみに、どうやらこれは映画以外にも原作の漫画とドラマがあるっぽいのですけれども、私はそちらは一切知らずに観てまいりました。

それでも十分面白かったですよ。

ともあれ、というわけで本作『イチケイのカラス』なのですけれども、この映画のお話としては、不審な点だらけで怪しいオイニーがむんむんのイージス艦と貨物船の衝突、そして地域経済を支える地元大企業の工場の環境汚染疑惑、それらの一見関係のないような2つの事件を巡る内容でございます。

この2つの事件を巡って法廷で、そして法廷の外でも熱気むんむんの戦いが繰り広げられるってわけですねえ。

ひょうきん者で型破りな裁判官「入間みちお」と絵に描いたような生真面目エリートの弁護士「坂間千鶴」の2人を中心に、コミカルとシリアスが同居する泣いて笑って楽しめる法廷エンタメ映画でございました。

そんなこんなで始まった『イチケイのカラス』でございますけれども、この物語は真実を巡る物語であると、そんな感じがいたしましたねえ。

本作の話の発端は先ほどちょいと書いたイージス艦と貨物船の衝突事件なのでして、この事件で亡くなった貨物船の船長の遺族である奥さんが、事件の詳細を明かそうとしない防衛大臣に怒って刃物を振るうという事件が起きてしまうわけでございます。

曰く、「船長である夫がそんな事件を起こすはずがない。防衛大臣は何かを隠しているに違いない」、と。

ともあれ、事件は事件ですからその傷害事件の裁判が早速始まるわけですけれども、イージス艦の衝突事件の詳細が明らかにならない限り被告人たる船長の奥さんは納得しないだろうということで、その裁判で裁判長を務めることになったみちおはこの衝突事件の真実を明らかにしようと必殺の「職権発動」を駆使して、裁判所主導で捜査しようと乗り出すわけですよ。

そんなこんなで、すったもんだのやんややんやがあった挙句、結局は衝突事件の真実が明らかになるのですけれども、その真実は船長の奥さんが思っていたものとは全く違うものでございました。

あれだけ知りたいと思っていた真実が、むしろ知らなければ良かったと思えるようなものだったのでございます。

他にも、知ったことによりさらに痛みが増してしまうような真実が作中ではいくつかありましたけれども、それを語るとまた長くなってしまうのでここでは割愛します。

というわけでして、本作を観て私は思ったわけですよ、真実を知ることですべてが解決するわけではないのだなあ、と。

真実を知るには代償が伴う、ということを痛感いたしましたねえ。

真実を知ればすべてきれいに片が付くわけではなく、むしろ知ってしまったからこそ向き合わねばならないことがまた増えてしまう、そんな人生の難しさを垣間見たような気がします。

しかしながら、そうであってもしかし真実と向き合うことの大切さが本作『イチケイのカラス』には描かれておりましたし、実際のところそういった強さが生きるには必要なんだろうなあと思いました。

というわけでして、『イチケイのカラス』は、思わず笑ってしまうようなコメディと同時に人生の難しさが描かれている味わい深い作品でございましたねえ。

上でも書きましたけれども、原作もドラマも知らなくても大いに楽しめました。

おしまい。