昨日は『テノール! 人生はハーモニー』を観てきましたよ。
内容はと言えば、「大学で経理の勉強をしつつスシ・ショップで宅配のバイトをしてるラッパーの青年が、ひょんなことからオペラ教師に才能を見込まれてオペラを始める」という感じでございます。
改めて文字にしてもなんだかよく分からない内容ですけれども、実際のところ嘘は何一つ書いてありませんので、気になる方はぜひとも観ていただきたいところ。
とは言え、このラッパーの主人公アントワーヌがオペラ歌手を目指して葛藤しつつも進んで行く姿が、とても良かったですねえ。
パリ郊外で地元のシマを守るべく、アントワーヌはラップで、アントワーヌの兄は決闘でそれぞれ頑張るわけでして、「シマを守る」という言葉から想像できる通り、ちょいとガラの悪い連中のいる世界でアントワーヌは暮らしているわけですが、そんなところでは「オペラを学んでいる」なんてとても言えないわけでございます。
だってオペラですよ、オペラ。
ラップとか決闘とかするような連中のやることじゃないじゃないですか。
むしろもっとお上品なお歴々が嗜むものですよ、オペラは。
しかし、アントワーヌとしてはラップよりもオペラの方に心を惹かれているわけでして、その点において葛藤を抱えるようになっていくのですよ。
次第に地元のシマを守ることに興味を無くしていくアントワーヌは地元の友人や兄とも衝突するようになっていくわけでして、そんな波乱の中で遂に作品終盤、アントワーヌはオペラ歌手のオーディションの舞台に立つことになるわけですが、そのシーンは凄かったですねえ。
アントワーヌのオーディションを知った地元の友人や兄が、軋轢を越えて続々と会場に駆け付けるわけですよ。
そしてアントワーヌのオペラを初めて聞いたラップや決闘の世界からやってきた地元の友人と兄は感動のあまり一斉に叫びとともに拍手喝采し、それと同時にアントワーヌはオペラという自分の進むべき道を見つけるわけでございます。
いやもうこのシーンは本当に熱気むんむんでしたねえ。
「大学で経理の勉強をしつつスシ・ショップで宅配のバイトをしてるラッパーの青年がオペラを始める」という荒唐無稽な設定からはとても考えられないほど素晴らしい結末でございました。
しかし今思えば、そういったとんでもない飛躍があったからこその感動なのかもしれません。
最初は想像すらしていなかったような意外なところに自分の進む道を見つけ、周りの人と衝突したり励まされたり、迷いながらも進んで行く、そんなところが良かったのかもしれません。
この作品は他にも印象的なところがいろいろありまして、例えばアントワーヌとそのオペラの先生との師弟関係だったり、アントワーヌと彼の地元の連中との関係だったり、あるいは唐突に差し込まれる謎の日本要素だったりと、何かとインパクトのある作品でございました。
あと、この映画のサントラもまたとんでもなくて面白いんですよ。
と言いますのも、オペラとラップがひとつのサントラに同居しているのでございます。
オペラとラップがひとつのアルバムに収まっているのは、これくらいなもんでしょうねえ。
さて、そして何よりも、オペラという今まであまり馴染みのなかったものを聞けたのも、良かった。
オペラ、凄かったですよ。
声がぶわーっと広がる感じでございました。
人間って、あんなことできるんですねえ。
というわけでして、『テノール! 人生はハーモニー』、想像以上に面白い映画でございました。
おしまい。