先日公開の『カンダハル 突破せよ』を観てまいりました。
いやあ、突破してましたねえ、突破してましたよ。
なんだこの雑な感想は、と思われそうなんですけれども、実際のところ滅茶苦茶突破しておりました。
さて、この作品のお話はと言いますと、主人公のCIA工作員トムはイランの核開発施設を吹き飛ばしたまでは良かったものの、その後いろいろあって正体がイランにバレてしまうわけでして、核開発施設を吹き飛ばされておかんむりのイラン、トムをとらえて市場で高値で売ろうとするパキスタン、あとは現地のゴロツキその他諸々に追われつつも、30時間後に640km先にあるカンダハルの基地を発とうとするイギリス軍の飛行機に乗るべく敵地を駆け抜けるといった具合でございます。
640kmというのがあまりにも長距離すぎてイマイチよう分からんかったので調べてみたところ、日本で例えるならどうも東京から函館を直線で結んだ距離よりちょい短いくらいらしいですよ。
日本で例えても距離が長すぎてまったくよく分からん!
ともあれ、物凄く長い距離をたくさんの敵に追われながら短時間で移動しなければならないというわけですから、これは大変なことでございます。
というわけでして、そんな工作員の逃亡を描いた本作でしたけれども、やはりなかなかスリリングな映画でございました。
追手を撒いたと思ったら今度はまた別の敵が現れたりと、行く先々で次々と困難が立ちふさがってくるわけでして、休む暇もない。
おおう、まだ来るかい、と思いながら観ておりましたよ。
さて、もうひとつ本作で印象的だったのは、登場人物がことごとく髭面のオジサンばっかりだったってことでしょうかねえ。
これに関しては『K.G.F』といい勝負ですよ。
どっちも髭面のオジサンまみれで誰が誰だか分かりませんでしたからねえ。
違いと言えば、『K.G.F』には鋭利なモミアゲがありましたけれども、本作には鋭利なモミアゲがなかったってことくらいですねえ。
また見た目に関して言えば、主人公トムを捕らえるべくイランから送り込まれた刺客のオジサン(無論髭面だったことは言うまでもあるまい)がとりわけいい味を出しておりましたよ。
何が良かったかって言ったら、大佐という物凄く立派な階級にも関わらず、そこら辺のしがないサラリーマンみたいな貫録の無いしょぼくれた表情をしているでして、その表情と役柄の対比でございます。
なんだったら平日の夜、オフィス街の最寄り駅に行ったらああいう顔つきの男なんてすぐに4,5人は見つけられるでしょう。
しかしながら、やはり工作員たるもの目立ってはいけませんから、そういう意味ではあの大佐が如何に腕の立つ工作員であるかを如実に示していると言えるでしょう。
また、彼が今までに手を汚してきた陰惨な仕事の数々によってああいう顔つきになってしまったのかもしれないと思うと、壮絶な思いがしますねえ。
とは言え、そんなしょぼくれ顔の大佐も部下に指示を出すときはてきぱきとしておりまして、「さすがは大佐だ!」と思いましたよ。
やはり大佐というだけのことはある、実に優秀な男でございました。
というわけでして他に類を見ないほど、見た目だけで多くを語るような男でして、これを演じた人の技量は尋常ではないなあと思ったウサオジでございます。
もはや主人公より印象に残っておりますからねえ。
と、そんな感じで、なんというかまあ、しょぼくれ顔のイランの大佐に注目の映画でございました。
おしまい。