この前見つけた『熱風!!南インド映画の世界』という熱気むんむん極まりない企画ですけれども、早速観てまいりましたよ。
記念すべき第一発目は『マガディーラ 勇者転生』でございます。
タイトルに「転生」とあります通りこれは転生の物語でして、400年の時を超えて二人の男が一人の女を巡って戦う愛と熱気むんむんに満ち溢れた物語でございました。
主人公のバイクレーサーのハルシャという男は街で偶然すれ違った一人の女性インドゥと指が触れ合い、電撃のような衝撃とともに、400年前の前世の記憶の断片を思い出すのでございます。
その記憶とは、国王の娘ミトラを巡って卑劣な軍の司令官ラナデーヴと死闘を繰り広げた一人の戦士バイラヴァの記憶。
その記憶では、力尽きて崖から落ちたミトラを追ってバイラヴァは一緒に落ちて死んだのでございました。
そしてなんとハルシャと指が触れったインドゥの前世は、実はその国王の娘ミトラだったというわけでございますねえ。
また一方で、悪逆非道の軍の司令官ラナデーヴもまた現代に転生しハルシャとインドゥの間に立ちはだかってくるわけでして、ここに400年の時を超えた死闘が今再び繰り広げられるというわけでございます。
どうですかこの設定、もうこれは熱気むんむん以外ありえない!
血が滾ることこの上ないですねえ!
というわけでして、とにかく熱気がむんむんで熱く激しい戦いが繰り広げられる映画でございました。
さて何と言っても一番の見所は、勇猛な戦士バイラヴァが100人の敵を次々となぎ倒すシーンでございますねえ。
やんややんやとあって国を追放されたラナデーヴはインド中の国を侵略し尽くしている侵略者シェール・カーンと手を組んでバイラヴァに挑んでくるわけですけれども、その折、「100人の敵を倒すまで死なない」という伝説を持つ一族の末裔たるバイラヴァにシェール・カーンは100人の手下を差し向けるわけですよ。
それでもうバイラヴァは、ちぎっては投げちぎっては投げの大奮闘でばっさばっさとなぎ倒し、傷を負いつつも伝説の通り100人の敵をぶちのめすわけですけれども、これは凄いですよもう。
敵という敵が大挙して槍やら鉈やらを持って挑みかかるところにバイラヴァは単身攻勢に出るのですが、1対100の人数差なんてなんのその、まるでわんこそばを食べるかのようなテンポで次から次へと蹴散らしていくわけでございます。
そこで私は、「おお、これはあの『RRR』のオープニングシーンでラーマがただ一人数千の暴徒に殴りかかったあのシーンのようだ」と思ったわけですけれども、しかしよくよく考えてみたら本作でバイラヴァを演じたのはラーム・チャラン、つまりは『RRR』のラーマでございますし、さらに本作の監督はこちらもまた同じく『RRR』の監督ラージャマウリでございますから、これはもう当然と言えば当然の帰結でございますねえ。
ともあれ、このシーンの物凄いところは戦うシーンだけにあらず、その後もいろいろと急展開を見せるのですよ。
そのひとつが、バイラヴァの戦いぶりに感動したシェール・カーンが涙を流しながらバイラヴァにひれ伏し仲間になろうとするシーンでございます。
100人を差し向ける前に「お前が100人を倒したら平伏してやる」とは言っておりましたが、実際にやられると「いや、本当に平伏するのかよ!」と一瞬思わないでもありませんでしたけれども、インド映画にそんなつまらん野暮な考えは無用。
些細な問題などすべて吹っ飛ばしてしまうような圧倒的な勢いと熱量こそがインド映画の真骨頂と、私はそう思う次第でございます。
そしてこのシェール・カーンも転生しまして、偶然にも瀕死のハルシャを助けるソロモンという漁師のオヤジとして登場するのですが、これがもう荒唐無稽極まりないキャラクターで規格外の勢いと熱量と笑いをぶちかましてくるのですよ。
無論ソロモンもまた前世の記憶を蘇らせ、今度は初っ端から主人公に加勢するのですが、転生した連中の中で一番ヤバいのはこいつかもしれません。
転生前のシリアスなキャラクターからは考えられないほどのオモシロオジサンと化しているのですよ。
軽妙な語り口とともに自分の結婚式をほっぽりだしてハルシャの窮地に駆け付け、大砲で塔をぶっ倒したり車をぶつけてヘリを叩き落としたりと、とにかくもうインド映画の激しさを体現するようなデタラメを乱発するわけですよ。
と、そんな感じのシーンが次々と繰り出され、激流のような凄まじい勢いでオープニングからエンディングまで駆け抜ける、とにかく爆発的な作品でございました。
とにかくインド映画らしい荒唐無稽で激烈なシーンが目白押しの素晴らしい作品でございました。
いやあ、これは観に行って良かった。
他の『熱風!!南インド映画の世界』の映画も楽しみでございます。
やっぱり寒い冬は熱気むんむんのインド映画に限りますねえ。
半年後くらいには「やっぱり暑い夏は熱気むんむんのインド映画に限りますねえ」とか言ってそうですけれども、それはまた別のお話でございます。
おしまい。