ウサオジという男、『プシュパ 覚醒』を観る

先日の『マガディーラ 勇者転生』に引き続き、『熱風!!南インド映画の世界』の作品を観てまいりました。

neppusouthindianmovie.com

今回は『プシュパ 覚醒』。

まず、もうこれ設定が見るからに『K.G.F』っぽさむんむんでして、「大丈夫かこれ?」と思いつつ観に行ってまいりましたが、案の定『K.G.F』らしさむんむんの作品でございました。

主人公は『K.G.F』のロッキーほどハードボイルドというわけでもなく、結構おちゃらけたりしておりましたけれども、しかしそれでも振り切れぬ『K.G.F』の幻影。

この作品の大雑把な物語は「貧乏母子家庭出身の男プシュパが、高価な木材の密輸を通して成り上がっていく」というものでございますが、勘の良い方はもう気づいたかもしれませんけれども、この文章の「プシュパ」を「ロッキー」に、「高価な木材」を「金」に変えたらまんま『K.G.F』のあらすじとして使えるのですよ。

いわば木材版『K.G.F』。

しかも『K.G.F』と同様にマフィア内の抗争であったり、公権力との戦いがストーリーの主な展開でして、この点においてもやはり似通っている。

『K.G.F』では国と戦っておりましたけれども、本作は地元の警察でしたねえ。

その違いのせいもあって、なんだかちょいと規模がローカルな『K.G.F』という趣があります。

また、見たところストーリーのテーマのひとつが縁故主義との戦いっぽいのですが、この点も実に『K.G.F』っぽい。

『K.G.F』では金山を牛耳っている一族に貧乏母子家庭出身のロッキーがひとり挑みかかりますし、本作『プシュパ 覚醒』も貧乏母子家庭出身のプシュパが木材密輸ルートを牛耳る三兄弟と戦って成り上がるお話でありました。

あと本作の場合は、父親や異母兄弟の連中との戦いもありましたねえ、そういえば。

プシュパの母親が父親の正妻ではなく愛人だったという関係で苗字を与えられず、そのおかげで子供の時から辛い目に遭ってきたのですよ。

ともあれ、インドにはカースト制などのお家柄を重視する風潮が強いそうですし、インド映画界もまさにそういった縁故主義まみれということを聞いたことがありますので、そういった背景から縁故主義をテーマにした映画が多いのは仕方がないのかもしれませんねえ。

私も専門家ではないのでそんなに詳しくないですけれども、インド映画界の縁故主義はどうやら物凄いそうですから。

俳優とか監督のプロフィールなどを読むと、そのほとんどに親兄弟その他親戚のどこかしらに映画関係者がいるという情報が載っていますし。

というわけでして、随分と『K.G.F』の二番煎じ感のある作品だったのは否めないわけですけれども、とは言え本作ならではの要素もありまして、そのひとつが物凄く強烈な登場人物でございます。

一人終盤になって登場する敵がいるのですけれども、これがまあ凄いといったら。

「パンイチツルピカ警視」、これが彼に私が付けたあだ名でございます。

この圧倒的なインパクトを誇るあだ名の通り、頭がツルピカの警視がパンイチなのでございますよ。

さて、これだけだととんでもない変態が登場したって思われるかもしれませんが、彼の名誉のために言っておきますと、別に露出趣味があってパンイチなわけではありません。

基本的には服を着ております。

ストーリー上の必要があって本人としてはしぶしぶパンイチにならざるを得なかったのですが、しかしその印象的なツルピカ頭と相まって、生粋のあだ名クリエイターである私の頭の中で物凄いあだ名が閃いてしまったというわけですよ。

ちなみにこいつ、実際に警視という偉い立場にあるお歴々なのですけれども、これがなかなかとんでもない悪党でして、輸送するには人数が多すぎて邪魔だからといって検挙した犯罪者集団のうちの数人をいきなりぶっ殺します。

それで「いや、12人ではなく元々10人だったんだ、お前何言ってんだ?」とかなんとか言って飄々としらばっくれて誤魔化すわけでして、こりゃあ大した悪人だぞと思いましたねえ。

そして本作は続編に続きまして、続編ではいよいよこのパンイチツルピカ警視とプシュパが本格的に戦うことになる予感でございます。

「木材ロッキーvsパンイチツルピカ警視」、これは物凄いカードが並びました。

続編が楽しみですねえ。

さて、改めて自分の書いた記事を読み返してみたら随分と『K.G.F』と似ていると書いておりますけれども、似ているということついては否めなくとも、無論違う点もパンイチツルピカ警視以外にもいろいろとありましたので、なかなか面白い作品だったと言えましょう。

ただ、今年は『K.G.F』を観たばかりだったので、タイミングが悪かったと言えば悪かった。

とりあえず全体的な印象といたしましては、『K.G.F』はあまりにもハードボイルドに振り切れておりましたけれども、本作の方が『K.G.F』よりも親しみやすい印象がありました。

ロッキーと違ってプシュパはダンスシーンでキレッキレの踊りをしますしねえ。

あとは、採掘用ハンマーを振るうフサフサモジャモジャの髪と髭が印象的なロッキーに対して、天パのプシュパは伐採用の斧を振り、ことあるごとにモジャモジャ髭を手の甲でぐりぐりぐりっと撫でるあの癖の強いポーズが印象的でございました。

さてと、それでは続編が日本でも公開されることに期待して、そのときを待つとしましょう。

おしまい。