『ノートルダム 炎の大聖堂』ウサオジという男と、灼熱地獄

さあ、映画三昧の先週末の最後を飾ったのはこの作品。

『ノートルダム 炎の大聖堂』でございます。

notredame-movie.com

いやあ、素晴らしかった。

これがですねえ、もう本当に素晴らしかったんですよ!

2019年4月15日、歴史的建造物「ノートルダム大聖堂」を包み込んだ美しくも恐ろしい灼熱の炎、死闘を繰り広げる消防士たち、そしてそれを見守るパリ市民の様子が、鮮烈に猛烈に激烈に描かれておりました。

まずは何と言っても炎の描写、これがもう壮絶なことこの上ない。

最初ノートルダム大聖堂の屋根裏に上がった小さな火の手は、あれよあれよという間に広がり、駆け付けた消防士たちの目の前に立ちふさがるわけでございます。

すべてを焼き尽くさんばかりの圧倒的な火炎を前に、消防士たちは決死の思いで消火活動にあたるわけですけれども、しかしノートルダム大聖堂の細く入り組んだ構造、厳重なセキュリティが仇となってその活動は困難を極める。

もはや手の施しようがないほどあちこちに燃え移ってしまった火を、それでも使命を果たすべく消防士たちは大聖堂内部をあちこち駆け回るわけですが、この火の強さがまた尋常ではなく、こんなのもう無理ではないかと思えるほどでございました。

そこらじゅうが火。

圧倒的な火の存在感。

その熱さ、もはや鑑賞している劇場すら炎上しているのではないかと錯覚するほど。

気づけばもう私の体も熱気むんむんになってきております。

そして、消防士たちを襲うのは火だけではありません。

火の熱さによって融点を超えた建材の鉛が、液体となって頭上から滝のように降り注ぎ、行く手を阻む。

これほど地獄絵図と呼ぶにふさわしい光景も滅多にあるまい。

そしてどうもこの灼熱地獄、CGではなく本物を使って撮ったらしいのでございます。

パンフレットによると、実際に炎上したセットの中に本物の防火服を着込んだ役者やその他の撮影スタッフを放り込んで撮影しているとのこと。

そして尖塔が建物内部に崩落するシーンも、セットを使って実際に10トンもの大量の建材を上からぶちまけることで崩落を再現して撮ったらしくて、手加減も容赦もありません。

究極のリアリティの追求、これどっかで似たような話を聞いたことがあるぞと思ったら、思い出しましたよ。

戦闘機の空中戦を撮るのに役者を実際に戦闘機に乗せて飛ばしたというあのトンデモ戦闘機映画、『トップガン マーヴェリック』でございます。

『ノートルダム 炎の大聖堂』も本当に迫真の映像表現でして、『トップガン マーヴェリック』と並んでも遜色がない。

リアルの追求といった点に関しては、どちらも究極の域に到達しているのは間違いありません。

そんな具合で、とにかく物凄い迫力の映像でございました。

また、本作が物凄いのは迫力だけではありません、燃え盛るノートルダム大聖堂の映像に加えて、一般市民が撮影した当時の本物の映像やニュース映像がところどころに差し込まれており、あたかも歴史的な大事件をリアルタイムで体験しているかのような感覚になりましたねえ。

とりわけ、途中で画面が縦に分割されて、当時撮られた実際のノートルダム大聖堂の映像と映画用に撮影した映像が同時に映るところなんかは、他の映画にはない臨場感でございました。

本作の撮影にあたってSNSで当時の映像を集めたとパンフレットには書いてありましたが、その実際の映像を映画作品として撮った映像と並べて映すことによって、ただのノンフィクション映画という以上に報道番組やドキュメンタリー作品の趣も感じられるようになっておりまして、真に迫る感じをひしひしと体感いたしましたよ。

そういった迫真の映像の数々によって、この歴史的大事件の裏で命を懸けて戦った消防士の男女の勇気、そしてそれを見守るパリ市民の祈りが鮮烈に描き出されておりました。

とりわけ、あの灼熱地獄に危険を顧みず飛び込んでいき、ノートルダム大聖堂を、そしてそこに収められている聖遺物を救出しようとした消防士の勇敢さは筆舌に尽くしがたい。

ノートルダム大聖堂なんて歴史の教科書でちらっとしか見たことがないような私でさえ、一丁前に感動してしまいましたよ。

これを歴史好きの人が見たら、そりゃあもうえらいこっちゃでしょうねえ。

ともあれそんな本作でありましたけれども、これはぜひとも劇場で観ておきたい衝撃の作品であると、私は言いたいですねえ。

冗談抜きで、何から何までとんでもなくすげえですから。

というわけでして、『ノートルダム 炎の大聖堂』、今年を代表するどころかもはや歴史に残るほどの熱気むんむんの大傑作でございました。

おしまい。