ウサオジという男、『SAND LAND』を観る

鳥山明原作の漫画を映画にした『SAND LAND』を観てまいりました。

sandland.jp

辺り一面が砂漠のサンドランド、そこでは人間も悪魔も水不足に苦しんでいるわけでございます。

人間は水源を独占する国王から水を高額で買わざるを得ず、悪魔は国王の輸送車から水を強奪する始末。

そんな世界で、保安官のラオ、悪魔の王子ベルゼブブ、泥棒の魔物シーフの3人組が幻の泉を求めて冒険に出る、といったのが大雑把な内容でございます。

全体的に軽快で小気味良い冒険アクション映画の印象でしたが、ところどころでドキッとさせてくるような展開もあったりして、波乱万丈で非常に面白いエンタメ映画でしたねえ。

面白かったシーンはいろいろあるのですが、ベルゼブブが自分がどれほどのワルか自己紹介するところは特に面白かったですねえ。

夜更かしした上に歯を磨かずに寝るし、朝寝坊した上にもちろん歯は磨かない。

とにかく歯を磨かない!

こいつはとんでもない極悪非道ですねえ。

悪魔の王子ですから、とにかく悪いことをするわけでございます。

このシーンを観た全国のチビッ子が歯磨きをしなくなり、親御さんは大いに慌てふためくことでしょう。

ともあれこの流れだと、ほじくり返したら歯磨き以外にも前科が出てきそうでございます。

さしずめ、トイレットペーパーを最後の5センチくらい残して取り換えないとか、麦茶のポットをコップ1/2杯分だけ残して冷蔵庫に戻すとか、満杯になっているごみ箱に無理くりゴミを押し込んでごみ袋を取り換えないとか、そういったところでしょうかねえ。

さてあとは、戦車を使った戦闘シーンも激しくてカッコよかったですし、何より主人公一味の保安官ラオがいい年をしたオッサンというところがまた良い。

ラオがベルゼブブとシーフに的確に指示を出して敵の包囲網を蹴散らすシーンがあるわけですけれども、これが最高にカッコいいんですよ。

敵の指揮官が「俺は伝説と戦うのか…」と呟くシーンがあるのですが、まさに伝説と呼ぶべき驚異的な手腕でございました。

オッサンの年季の入った老練な戦いっぷりに目が離せません。

そして激しくてカッコいいシーンだけでなく、ラオが自身の過ちに対して「本当の悪魔はどっちなんだ」と苦悩する場面なんかもあり、しかしそれでも前に進もうとするところに希望を感じました。

他にも「偏見は正しい判断を狂わせてしまう」、「正義を疑わなかった報いだ」など、ちょいちょいドキッとするような言葉、シーンが散りばめられており、ただ面白いだけで終わらないところが奥深くて良いなあと思いましたよ。

と、そんな具合で、子供が喜びそうな激しいアクションとコミカルなやり取り、勧善懲悪の清々しい物語だけではなく、リーアム・ニーソンの映画のようにダークな重厚感もちょいとありましたねえ。

盛りを過ぎた年齢のオッサンが技量と経験の限りを尽くして信念のために戦う映画は実写、アニメを問わずいつも素晴らしい。

というわけでして、本作『SAND LAND』は子供も大人も楽しめる作品だと思いました。

さて、これは原作の漫画もあることですし、今度読んでみるのも良いかもしれませんねえ。

おしまい。