ウサオジという男、『デシベル』を観る

先日『デシベル』を観てきました。

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大雑把な内容は、元潜水艦副長カン・ドヨンのもとにテロリストから電話が届き、そこからカンは連続爆弾テロ事件に巻き込まれていくというお話でございます。

実はこの爆弾テロ事件の1年前には潜水艦事故が起きており、それがこのテロと繋がりがあるのですけれども、テロ事件の進行と並行して過去の事件の回想シーンがありまして、徐々に過去との繋がりやテロリストの正体、動機が分かってくるという作品でございました。

さて、それでタイトルの『デシベル』なのですけれども、これは爆弾の特性からつけられたものでして、本作で犯人が使う爆弾と言いますのが、爆弾の周囲の騒音が一定の音量を超えると起爆までの時間が半減するという厄介な代物なのでございますよ。

しかもこの爆弾、そういう特性からサッカースタジアムや公園など、うるさいところに仕掛けられるのでして、そのおかげでしょっちゅう半減する。

解除しようと頑張っていたら周囲の騒音が唐突に高まり、一気に制限時間がなくなってしまうわけでして、なかなかスリリングでございます。

また、爆弾が爆発すると思ったら実はそれはフェイクだったりもするわけでして、一体今度の爆弾は本物なのか偽物なのかともうそこからドキドキですねえ。

しかも逆に爆発しないと思いきや今度は爆発するようなシーンもありまして、とにかく油断も隙もあったもんじゃないスリルに満ち満ちている。

さあ、今度のは本物かフェイクか?

固唾を呑んで見守りましょう。

そんなスリリングな爆弾を使ったテロの一方で、過去の潜水艦事故の回想シーンを通じてテロリストと主人公カンとの繋がりが徐々に明らかにされていくわけですけれども、この事件がなかなか重たいものでございました。

ただテロと戦う単純に激しい映画ではなく、重厚感のある人間ドラマもあるわけですよ。

そちらは爆弾テロシーンのような激しさはありませんが、ずっしりと心にのしかかってくるような展開でございました。

そして潜水艦事故の全貌が明らかになり、テロ事件が終結して作品が終わったときの印象は独特のものがありましたねえ。

マッチョな主人公が大暴れするような単純明快アクション映画を観た後の爽快感とは違い、大きな事件が終わったというのにまだ何か心に残るようなものがある、そんな余韻を残しておりました。

映画をしょっちゅう観るようになってから既に何本か韓国映画を観ておりますけれども、韓国映画の鑑賞後の余韻にはいつも独特なものがありますねえ。

観た後もしばらく印象に残るような作品が多いと感じております。

さてところで、作中で不幸にもこの爆弾テロに巻き込まれなりゆきでカンの相棒を務めることになってしまった、子連れでサッカーを観戦していたオ・デオという男がなかなか面白い役でして、シリアス一辺倒になりそうなストーリーに絶妙なタイミングで笑いをぶちこんできており好印象だったということも書き残しておきましょう。

常にひょうきんな三枚目、というわけでもなかったのですけれども、シリアスな本作におけるアクセントとなる面白担当として頑張っておりましたねえ。

本人としてはいたって真面目にやっているのに、何をどう間違えたのか気づけばどこか面白くなってしまう、そんな男でございました。

シリアスなシーンもコミカルなシーンもこなす、名わき役ってとこですねえ。

というわけでして、爆弾テロという極めて激しいテーマを扱ったにもかかわらず、その事件が起こった背景を回想シーンとして挟んだり個性的なキャラクターを配置することで、多層的な面白さのある作品だと思いました。

おしまい。