ウサオジという男、『ヤマドンガ』を観る

遂に私の『熱風!!南インド映画の世界』を巡る映画鑑賞も4作品目に至りました。

neppusouthindianmovie.com

この企画の最後の作品は、『ヤマドンガ』でございます。

『ヤマドンガ』とは、これは間違いなく『熱風!!南インド映画の世界』きっての意味不明タイトルですけれども、観ていたら分かりましたよ。

「ヤマ」というのが「閻魔」という意味で、「ドンガ」というのが「泥棒」といった意味でございますから、つまり「ヤマドンガ」は「閻魔泥棒」というわけでございますねえ。

というわけで無論「閻魔」と「泥棒」に関係する内容でして、これは主人公の泥棒の男が空に向かって閻魔大王の悪態をついて挑発したことをきっかけに閻魔大王と戦うことになる一方で一人の女性と運命的な出会いをする、というなかなか意味不明な映画でございます。

自分で書いておいても支離滅裂で意味不明な内容に見えるのですけれども、実際に支離滅裂で意味不明な内容だったのでこれで問題ありません。

しかしながら、本作は『熱風!!南インド映画の世界』という企画の4作品中で最も意味不明な映画であると同時に最も笑える映画であったと、4作品全部を観た今なら自信を持って言うことができます。

意味不明と言っても、設定があまりにも荒唐無稽すぎるだけなので、鑑賞後にはそれなりの納得感がありますので、安心してご鑑賞ください。

というわけでして、シンプルに「笑える」という点においては、ぶっちぎりでトップの面白さでございます。

とにかくコメディ色が強すぎる。

これはインド映画界屈指のバカが酔っぱらった勢いで作った映画に違いない。

そもそも、『熱風!!南インド映画の世界』のサイトに載っている写真からして異色すぎるのですよ。

やたらと豪華絢爛な恰好をした小気味良い笑顔の男のインパクトが強すぎる。

とりわけ、髭の端っこのくるっとしているところがふざけすぎている。

この写真を見ただけで笑えてきますよ。

落ち込んだときとかに見たら元気でそうですねえ。

ところでこいつが主人公のラジャでして、このラジャが地獄に堕ちて閻魔大王から閻魔の座を奪ったときの姿がこの写真でございます。

いわばラジャ(閻魔モード)ってとこですよ。

本物の閻魔大王も似たような豪華絢爛な恰好をしているけれども、本物はもっとオッサン臭いちょいと嫌味なやつでございます。

さて、この地獄のシーンがなかなか狂気に満ちていて面白かったのですが、閻魔大王を挑発して怒らせた主人公ラジャは閻魔大王によって地獄に落とされるわけですけれども、そこで「死の縄」という閻魔の力を得られるアイテムを盗んでやりたい放題やるんですねえ。

それで散々閻魔大王を馬鹿にしていたと思ったら今度は正式な閻魔大王を決める選挙を開催したりして、しかもなぜか途中で元議員のラジャの祖父まで出現してもはやキチガイ沙汰と言う他ない展開を見せるのでございます。

このラジャの祖父というのがこの選挙のシーンに出るだけのちょい役なのですけれども、しかし本作、いや今までに観たインド映画屈指の異様な存在感を誇るのでぜひとも劇場で観ていただきたい。

ともあれ、地獄のシーン以外にも何から何まで意味不明でキチガイ沙汰にも関わらず、全体を通して観るとしっかりと話の筋は通っているという奇跡のような映画でございました。

インド映画といえば忘れちゃいけないミュージカルシーンもふんだんにありまして、とにかく笑い転げられること間違いなしの傑作でございます。

神々との結びつきを感じられるシーンがあるのもインド映画の特徴のひとつですけれども、こういう方向で神々を登場させるとは予想していなかった。

閻魔大王のような神を笑いものにするような映画を作っちゃっても大丈夫なんだなあと、その点にも驚きを隠せません。

実はこれ、インドの方でも問題作扱いされてたりしませんかねえ?

もしかしたら、この映画の監督を始めとする関係者も地獄に落とされるかもしれませんが、そうなったらそうなったで面白すぎるのでぜひとも頑張っていただきたい。

というわけでして、とにかく異色の強烈な映画でございました。

おしまい。