ウサオジという男、『ウィッシュ』を観る

最近話題の映画『ウィッシュ』、観てまいりましたよ。

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何かと至るところで宣伝されて盛り上がっているということで、気になって観に行ってまいりました。

これの主題歌なんか、外に出たら絶対にどっかで耳にするってくらいそこかしこで流れておりますからねえ。

内容はと言えば、物凄くざっくり言うなら、主人公の少女アーシャが国王に奪われたみんなの願いを取り戻すべく奮闘するミュージカル映画といった趣でございました。

楽しく盛り上がるようなミュージカルシーンに彩られつつも、願いを叶えるとはどういうことかと問いかけるような内容でしたよ。

映画の舞台であるロサスという国の民衆は、自分の願いを王様に差し出しいつか王様が魔法の力で叶えてくれるのを待ちながら暮らしているわけですけれども、どの願いがいつ叶うのかは王様次第でそれがいつになるのか本人には分からない。

しかも、一度願いを差し出してしまえばその願いは記憶から消えて二度と思い出すことはできなくなってしまい、また差し出してしまった願いを返してもらうこともできないので、王様に叶えてもらう以外にはその願いを実現する方法はなくなるって寸法でございます。

しかしその王様は自分に都合の良い願い以外は決して叶える気はなく、叶えられない願いは預かったままにするというやり口をしているのでして、その事実を主人公アーシャに知られたことで物語が大きく動き出すわけですよ。

正直言って、国益を損なう可能性がある願いは叶えないという考え自体は筋が通っていないこともなかったのですけれども、それをあまりにもパラノイアじみたレベルで判断するもんですから問題になるわけですねえ。

また一方で、そもそも自分の願いをまるっと全部人任せにする国民も国民でして、あまりにも他力本願すぎて笑ってしまいました。

自分の願いをそんな全力で思いっきり人任せにしたらさすがにまずいでしょうよ。

というわけでして、これはもはや騙す方も騙す方なら騙される方も騙される方というところがありましたけれども、しかし玄関のドアがパアパアだったからと言って人の家から物を盗めば盗んだ方が悪いのと同様、他力本願な国民と言えども彼らから願いを取り上げてしまった王様の方が悪いということになるのかもしれません。

そんな面白おかしい寓話のような本作ですけれども、要するにこれは「自分が本当にやりたいことを他人任せにしてはいけない」といったメッセージなのだろうと思いました。

誰かがいつか何とかしてくれると思っていてもその「いつか」はやってこない、夢を叶え始めたとき「いつか」は訪れる、つまりそういうことなのでしょう。

ダメだ!やっぱりこういう話になると『バンバン!』のネタが出てしまう!

ともあれ、結局のところ、やりたいことは人任せにせず自分でやらねばならないということなのでしょうねえ。

全部誰かが代わりにやってくれるなんて都合の良い話はないのですから。

さて、あるいはこのお話をもっと突き詰めて考えると、「うまい話には裏がある」ってところにも通じるのかもしれません。

王様がなんでも願いを叶えてくれるっていうのはつまり、現実世界で言うところの「1日30分で月収200万円!!」といった胡散のオイニーむんむんの広告みたいなもんですよ。

自らの手を汚さず他人任せで楽して大きなことを成し遂げることはできない。

と、そんな具合で面白い映像表現の中にもしっかりと含蓄のあるお話で、1年を締めくくるに実にふさわしい力作でした。

ちなみに、私は字幕版と吹替版の両方観てきましたけれども、どちらも非常に出来が素晴らしくて良かったですよ。

おしまい。