『帰ってきたヒトラー』彼が帰ってまいりましたよ!

今日は久々の小説ネタでございますよ。

今回はティムール・ヴェルメシュさんの『帰ってきたヒトラー』でございます。

遂に、遂に我らが総統が帰ってまいりましたよ!

というわけでして本作『帰ってきたヒトラー』なのでございますが、これは2011年8月のドイツにあの有名なヒトラーがタイムスリップしてしまうという、とんでもなくとんでもない内容の小説なのでございます。

そして紆余曲折あって、ヒトラー本人なのになぜかヒトラーの"モノマネ芸人"としてテレビやユーチューブにデビューしてしまうんですねえ。

さて、読んだところ、このお話の基礎にあるのは勘違いでございます。

ヒトラーとその会話相手のそれぞれが勝手に自分に都合が良いように相手の言葉を解釈するもんだから、どんどんどんどんと話がおかしな方向に行ってしまうのでございますよ。

しかしながら、各々が勝手に相手の言葉を解釈しているにも関わらず、なぜか最後はうまいこと話が落ち着く、という展開がなんだか漫才みたいな感じで面白く思いました。

意外にも、ヒトラーもヒトラーで、話している言葉だけ見ると思いのほかまともなこと言ってたりするんですよねえ。

裏で考えていることはそりゃあもうとんでもなかったりするのですが、少なくとも表面上はまともに見える、あるいはまともなことを言っていると解釈できる余地があるのがこの話のミソでございます。

例えば、「ユダヤ人を冗談の種にしない」という考えがヒトラーと番組制作会社の人の間で共有されるのですが、お互いがお互いにまったく別の理由でユダヤ人をネタにしないと誓うのでございますよ。

ともあれ、総統には何か都合の悪いことがあるとすぐユダヤ人やボリシェビキのせいにする癖がありますねえ。

いきなり「経験を積んだ国家社会主義者の目はごまかせない。これはユダヤ人の陰謀なのだ」とか考え出すので、油断も隙もあったもんじゃないでございます。

私にはどう考えてもユダヤ人の陰謀に見えなかったので、まだまだ精進が足りないというわけでございますよ。

ともあれ、逆に、都合の良いことがあるとすぐ運命とか神意とかいったものを持ち出すのも総統の癖であることも忘れずに付け加えておきます。

と、そんなこんなで総統がドイツのメディアを通して暴れ狂う本作なのですが、結局のところ、人は見たいものだけを見るし聞きたいことだけを聞くっていうどっかで聞いたような話に落ち着くような感じがしますねえ。

SNSだかなんだかでも、誰かの言ったことを他の誰かが元の発言者の意図を無視して勝手な解釈をして、やんややんやとあった挙句炎上するなんていうのも結局ところはそんな感じなんじゃあないでしょうか。

私はブログを除いたらSNSの類を一切やってないので詳しくは知りませんけど。

というわけでして、私はこれからも親愛なる読者の皆様方が好き勝手に読み散らかしてくれるであろう文章を、好き勝手に書き散らかしていこうと思いますよ。

おしまい。

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